十八
 帰去来(いざいなん)、魔郷には停まるべからず。曠劫よりこのかた六道に流転してことごとく皆経たり。到るところ余に楽なし、ただ愁歎の声を聞く。この生平を畢えて後、かの涅槃の城(みやこ)に入らん。              (善導大師『観経疏 定善義 水観』)
 
帰去来:陶淵明の「帰去来辞」の中の言葉。故郷に帰る決意を述べたものであるが、ここでは浄土に生まれたいという意をあらわす。
魔郷:魔障のある世界。娑婆を指す。
曠劫:はかりしれない昔。
生平:生涯。