[一念多念文意]
しかれば、『大経』には、「如来所以興出於世 欲拯群萌恵以真実之利」とのべたまえり。この文のこころは、「如来」ともうすは、諸仏をもうすなり。「所以」は、ゆえ、ということばなり。「興出於世」というは、仏のよにいでたまうともうすなり。「欲」は、おぼしめすともうすなり。「拯」は、すくうという。「群萌」は、よろずの衆生という。「恵」は、めぐむともうす。「真実之利」ともうすは、弥陀の誓願をもうすなり。しかれば諸仏のよよにいでたまうゆえは、弥陀の願力をときて、よろずの衆生をめぐみすくわんとおぼしめすを、本懐とせんとしたまうがゆえに、真実之利とはもうすなり。しかればこれを、諸仏出世の直説ともうすなり。