ジョナサン・ハイト著「しあわせ仮説」

ジョナサン・ハイト著「しあわせ仮説 古代の知恵と現代科学の知恵」
 
この著者は、いくつかの思想が講義の中で繰り返して出てくることに気づき、
それらの思想を要約すると、感情や、出来事への反応や、ある種の精神病は、
われわれが世界を見る心のフィルターによって生じると理解した。そして、
心理学的な主張、つまり人間の本性や、精神や心の機能についての記述を
見つけるたびにメモしたそうだ。
全時代に広く知れ渡った、人類の心理学的な思想の頻度よりも一貫性を重視し、
それらをうまく組み合わせることによって、人類はいかに幸福と人生の意味を
見つけることができるかということについて書いたという。
  
そのように、幸福と人生の意味を見出す手助けをする心理学をポジティブ心理学と言う。
 
「幸福はどこから来るか?」この問いに対していくつかのタイプの「幸福仮説」がある。
ひとつは、幸福は欲しいものを手に入れることによってもたらされるというもの。
しかし、誰もがそのような幸福は長続きしないのを知っている。
より見込みのある仮説は、幸福は心の内側からもたらされるもので、インドのブッダ
ギリシアストア派の哲学者の考え方である。
 
この著者はこの二つ目の幸福仮説も、間違っていると言う。
最近の研究から、この世の中には追い求める価値があるものが存在する
ということがわかってきた。人生には、人を恒久的に幸福にする外的条件が存在する。
このような条件のひとつが、関係性であり、絆である。
幸福は、心の内側からやってくる。そして、外側からもやってくる。うまくバランスを
取るためには、古代の知恵と現代科学の両方の助言が必要ということだ。

最近の傾向として、「絆」という言葉がもてはやされている。
そこに現代の閉塞感を打破するヒントが隠されていると感じ取ってのことだろうか。
自分は、「絆」という言葉自体には同時に、窮屈さや何かマイナスのイメージを感じるので
心からということでは好きな言葉ではない。「絆のようなもの」とでも押さえておこう。
 
この本の各章では、
どのようにしてお互いに仲良くしていけるのか(第3章、第4章)
幸福を見つけていけるか(第5章、第6章)
心理的、道徳的に成長していけるか(第7章、第8章)
人生に目的や意味を見つけることができるのか(第9章、第10章)
について述べられている。

第2章にこんな仏陀の言葉が引用されている。
私たちの今日ある姿は、私たちの昨日の思考から成り、
私たちの今日の思考が明日の生活を形成する。
人生は、私たちの心の創造物である。