二四 無量生死の中に人身を得ることは甚だ難し。たとえ人身を得るとも諸根を具うるは亦難し。たとえ諸根を具うとも仏教に遇うことは亦難し。たとえ仏教に遇うとも信心を生じることは亦難し。故に大経にいわく、人趣に生まるる者は爪の上の土の如く、三途に堕する者は十方の土の如しと。法華経にいわく、無量無数劫にも、この法を聞くことは亦難し。能く是の法を聴く者あらば、此の人も亦復難しと。而るに今たまたま此等の縁を具す。当に知るべし、應に苦海を離れて浄土に往生すべきは只今生にのみ在ることを。而るに我等、頭に霜雪を戴きて心俗塵に染まば、一生は尽きると雖も希望は尽きず、遂に白日の下に辞し、独り黄泉の底に入る時、多百踰繕那の銅然猛火のなかに堕し、天を呼び地を叩くと雖も、更に何の益があらんや。願わくば諸々の行者、疾く厭離の心を生じて、速やかに出要の路に随え。宝の山に入りて手を空しくして帰ること莫れ。    源信僧都『往生要集』