新型インフルエンザに感染した患者が30人を越えた。そのことに関しては別に何の感想もないが、大騒ぎをして結局患者をだしてしまった政府のやり方には異義がある。対策をすることは大事なことだと思うが、なぜ、水際で阻止しているから大丈夫、などという誤ったメッセージを発信するのだろうか。支持率の低い政府与党の人気取りの宿命なのかもしれない。
 最近、まだ分からないだろうというときに、責任逃れのコメントをすることが多すぎる気がする。追跡中に逃走車が事故を起こせば、すぐに追跡方法に問題はなかったと発表する。問題があったと反省することは皆無と言って良い。これは、何をやっても良いということと同じだし、権力の乱用である。強いものほど謙虚でなければならない。
 また、問題のあるときには発表を控えるて、隠蔽するということにもなりかねない。現に、愛知県の一家3人死傷事件では、犯人を目撃し声まで掛けたのだが、犯人だと気づかずに逃がしてしまった。この事実は、かなりの時間隠されていた。幹部はどのように発表したらいいのか悩んだに違いない。シナリオが書き終わってようやく表に出てきた。しかし、そうしている間に、事件解決のための大事な時間を無駄にすることになる。二重のヘマをやっていることになるのだ。
 名古屋市の河村新市長は、モノレールの車輪がはずれた事故の報告が5〜6時間もして上がってくることを叱責して、「起こったことのそのままを、すぐに伝えてほしい」と言っていた。報告する側の言い訳は、事実確認をしてから報告するために時間が掛かったと言うことだが、河村氏は「事実確認して、都合が悪かったら、隠すでしょう」と人懐っこい名古屋弁のイントネーションでやんわりと釘を刺していた。
 本当に失敗したら、失敗したということを認めて、そこから反省するということがなくなった。反省していたら職がなくなってしまう。なんとしても責任だけは逃れないといけない。そんな体質の中で、いつまでたっても同じところをぐるぐるぐるぐると回ってしまっている。
 今回の水際対策は万全というキャンペーンで、海に囲まれた日本は大丈夫かもしれないと、偽の安心感を植え付けられた。そのことによって、神戸市民は膨大な被害を被った。今日の休みはお祭りの最終日で、例年100万人の人出が出ると言う。しかし、そのお祭りも急遽中止。お客を当て込んで大量に商品を仕入れた商店は大赤字だそうで可哀想な限りである。車業界、電機業界は救済策がとられるのに。ホテル業界もキャンセル続出で大損害を受けた。損害補償のばら撒きが、またあるのだろうか?
 これは、最悪にも匹敵する対策の失敗である。こうなることも想定して、神戸の場合月曜日まで頑張れる体制にしておくとか、空港だけで安心と高をくくっていないで、発熱患者の調査、隔離をもっと慎重にやるべきだったのではないだろうか。第一、発症したその高校ではインフルエンザが流行っていたというではないか。無駄になってもいいから、そのウィルスが新型でないかどうか調べておくべきではなかっただろうか。
 新型ウィルスは、外国から持ち込まれて、空港で阻止できるので、海外旅行の経験がないものにうつることはない、と政府が間違った情報をもたらした結果、新型のウィルスの発見が遅れ、患者も急速に増加することになってしまった。いまも増え続けているので、東京などの大都市に広がるのも時間の問題かも知れない。そうすれば、不幸なことに不況の中、さらに追い討ちをかける結果になる。ここまできたら新型インフルエンザを普通のインフルエンザに格下げするより、収拾するすべがないのではないだろうか。
 結果は同じだったかもしれないが、安易に水際阻止宣言を出し、結果心の備えが遅れたのは、このような結果をまったく想像できず、正しい情報を発信できなかった政府の責任といっても過言ではない。よくやっていると、褒めた評論家もいたが、この結果では、その評論家もプロならその発言を訂正し、間違いだったと謝る場を設けねばならない。
 今、ニュースで80人の患者数と発表しています。