心新たに再開したいと思います。
1.当麻曼荼羅と中将姫
 ただいまより、御絵解き申し上げますのは、中将法如感得の当麻曼荼羅でございます。
 天平19年と申しますから、今から約1260年前のことでございます。
 時の帝は45代聖武天皇、その右大臣に藤原豊成卿という大そう立派な方がおられました。豊成卿、地位も教養も暮らし向きも、すべてに申し分のない身の上でありましたが、ただ一つ悩みがございました。やがて歳初老になるというのに実子が無かったのでございます。何とかして子供を授かりたいと願い、夫婦そろって神社仏閣に参詣をし祈願をいたし、ついに大和長谷寺に三七21日間参篭して、『男子と欲は申しません。女の子でも結構ですから、どうぞ我に子を授け賜え』と念じ続け、満願の明け方、丈六の観世音菩薩が夢枕に現じ給い、奥方紫の前が御懐妊なさったのであります。
 月満ち生まれました女の子が後の中将法如でございます。幼い頃より姫は藻琴に聡明で、かつ、美しい姿と心を持ち、誰からも可愛がられ、蝶よ花よと育てられておりましたが、姫6歳の時、母上紫の前様がカミナリに打たれ忽然としてお亡くなりなされました。姫は幼き心を痛め、母孝養の為とて、経を誦したり写経をして菩提を弔い、いつしか姫の心に仏縁が目覚めていくのであります。