親鸞聖人御絵伝
親鸞聖人の御絵伝の御軸は、聖人の御一代記の歴史ではないのです。」
という前口上から始まる「親鸞聖人御絵伝」は昭和60年8月S.H.作とあります。
「我々が未来永久に阿弥陀仏にお助け頂ける仏法(方法)が詳しく教えてあるのです。この仏法とは真実信心の帰命です。斯くの如く我々を幸福に御導き頂ける親鸞聖人の御教えを我々に理解し易くした御伝鈔(伝える本)を御著し下されましたのが覚如上人で、是を更に判り易くした御絵伝を画かれたのが、康楽寺の住職 兼 絵師である法眼浄賀と申す僧侶であります。故に御絵伝は我々の亀鑑(鏡)とすべき大切なる教えです。然るに依りて御絵伝の御軸は、地・水・火・風の四幅に分けてある。地・水・火・風の四体は我々の身体で、この身体には八識が具わってある故に、御絵伝の上巻を八段とす。この八識に我々は操られて、我がままな行為をして地獄へ堕ちる故に下巻を七段として七宝荘厳(仏心)へ御導き下さるように作ってあるのです。このように我々が永久に幸福になる御教えの御絵伝ですから、画かれてある一木・一草・その他にも有りがたい御教えが含まれてあります。★尚親鸞聖人は阿弥陀仏の御化身なりと教え、聖徳太子は観世音菩薩、法然上人は勢至菩薩、玉日の姫は救世菩薩の御化身を示してあります。また、我々の貪欲を熊谷直実入道で、瞋恚を弁円で、愚痴を平太郎で教え戒め給う教えとしてあります。」
最近の絵説明とは違い、昔の絵解きは、かなり大胆な解釈がなされています。自分の興味は「玉日の姫」ですが、この絵伝では、玉日の姫=恵心尼公ということらしいです。松尾剛次著「親鸞再考」では、親鸞九条兼実の娘玉日の姫と結婚し、範意(印信)と善鸞(慈信房)を生んだあと、恵心尼と結婚もしくは同時に二人の妻がいたと見ています。このように親鸞絵伝の絵解きは、謎解きも思わせる興味津々といったところです。