八
 佛法に無量の門あり。世間の道(どう)に難あり易あり。陸道(ろくどう)の歩行(ぶぎょう)はすなわち苦しく、水道(すいどう)の乗船はすなわち楽しきが如し。菩薩の道(どう)もまた是(かく)の如し。或いは勤行(ごんぎょう)精進のものあり、或いは信方便の易行をもって疾(と)く阿惟越致地(あゆいおっちぢ)に至るものあり。龍樹菩薩『易行品』
 お西の浄土真宗聖典七祖篇 p.6[三]
 注釈 陸道の歩行:陸路を徒歩で歩くこと。難行道を喩えていう。
    水道の乗船:水路を船に乗って渡ること。易行道を喩えていう。
    信方便易行:信心を方便とする易行。称名を指していう。
 龍樹菩薩の著『十住毘婆沙論』の中の巻第5「易行品」第9に出てくる一節。
 「易行品」の内容は、まず不退の位に至る道について、難行道と易行道の二種があることを示し、根機の劣った者に対して信方便易行の法を説き与える。最初に恭敬心をもって善徳等の十方十仏の名を称えることを易行の法として示し、『宝月童子所問経(ほうがつどうじしょもんぎょう)』の文を引用してその明証とする。つぎに問答を設けて、阿弥陀等の百七仏、毘婆尸等の過去七仏、未来の弥勒仏、東方八仏、三世諸仏、諸大菩薩等を憶念称名することも同じく易行の法であると示して、一品の説述を終えている。