「山下清東海道五十三次」の続き。
第25 金谷の牧の原
 牧の原ってとこは全部お茶畑だな 日本人はお茶がすきだから こんなに広いお茶畑がいるんだな ぼくはルンペンしてるとき よその家でときどきお茶をのませてもらったけど 西洋のルンペンはコーヒーか紅茶を飲ませてもらえるのかな 日本でもお茶をくださいというと ルンペンにお茶はぜいたくだ水にしろといわれたので 水はおなかをこわすと悪いですというと 勝手にしろといって それでもお湯をくれたな
第35 豊橋の城
 お城というのは日本式の古い建物で ずっと昔からあるのかと思ったら みんな新しいのはどういうわけかな ここのお城は新しいけど 小さくてかわいいな ずっと昔 千姫という女の人がこの城に住んでいたという話をきいたけど かなしい話みたいだったな
 小さな城のそばに白いサザンカが咲いているな ぼくはいまは傘をもっているけど サザンカは雨にふられて つめたそうだな

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〈資料館で知ったこと〉 
山下清の日記帳などの記録の書き物には「、」や「。」やカッコがない。そのことについて、山下清本人がこんなようなことが書いてあった。
「話すときに「、」も「。」もカッコもないんだな」
これを見たときに、この人の感性に興味が沸き、感動さえ覚えた。
感動すること、知らないこといっぱいである。