何度か書いた‘新神戸電機(株)’というところで新卒から11年間お世話になった。最初の6年間はリチウム電池の開発に取り組んだ。その後ニカド電池ニッケル水素電池の開発と移動した。
 今松下電池工業がリチウムイオン電池の発火や変形といったクレームで大変なことになっている。リチウムの取り扱いは極めて難しい。リチウム金属を使わずに、カーボンにリチウムイオンを取り込んで、安全性を確保していた。この技術を開発して、民生用として商品化したアイデアには感心していた。
 自分が取り組んでいた電池は‘リチウム-塩化チオニル電池'といって単一サイズで14Ahの容量をもつ大電流放電可能の高出力のリチウム電池だった。電圧は3.6V。リチウムは水に触れると爆発的に発火する。空気中の酸素とすばやく反応して酸化リチウムの皮膜を作ってしまう。したがって極めて酸素と水分の低いグローブボックス内で作業する。露点(水が結露する温度)−70℃。アルゴンガスで空気を置換する。塩化チオニルも劇薬で水と反応して腐食性ガスを発散する。そんなリチウム箔とカーボン電極を捲回してレーザー溶接で密閉した中に液体の塩化チオニルを注入する。その前に抵抗計で、ショートしていないか確かめておかないといけない。そうしていても中にはショートしているものがあり、一度は爆発してグローブボックスから吹き飛ばされたことがあった。横にはガスマスクも容易していた。この電池を並列につないで更に容量をアップして使う予定だったが、容量のばらつきがどうしてもあり、逆充電という現象が起こるとやはり爆発した。結局、民生用には向かないということで、研究はストップしたが、賢明な判断だったと今では思う。
 そんなことで懐かしくなり調べてみたら、商用化(一般市販品ではない)されているではないですか。名前も順序が変わって、塩化チオニル-リチウム電池日立マクセル新神戸電気と系列会社です。http://www.maxell.co.jp/jpn/industrial/battery/lineup/er.html
リチウムイオン電池はこちらを参照。http://www.maxell.co.jp/jpn/industrial/battery/lineup/li.html
 リチウム電池(特に2次電池)は基本的に危ないということを認識するべきです。その危険と便利さとを天秤に掛けて、自己で判断して、使用するときはなるべく安全に使用するように気をつけないといけないと思います。メーカーは安全装置を考えてあるようですが。こういうと無責任のように思われるかも知れませんが、世の中では、プラス効果をとるために、敢えて害のあることをしているということがあります。これは個人の選択の自由です。
 私たちは知識を知らないため、あまり考えずに当たり前に行なってしまっていることがあるかも知れません。