中日新聞「座標変換」私の直言
ヒマラヤ南麓のブータン王国は物質的な豊かさを否定し、独自に策定したGNH(国民総幸福)の増加を国政の中心に据えている。なぜ経済規模で幸福は測れないのか。国内総生産(GDP)は幸福の尺度といえないのか。GNHに詳しい麗沢大の大橋照枝教授は、こう語る。
GDPは人間の幸福や満足に関わりなく、金が動くと全部、経済効果に足してしまう。戦争や交通事故、自殺、離婚も経済効果にプラスになる。GDPを批判する人たちは、環境破壊や交通事故、自殺、離婚の費用を引き算してつくるべきだと主張している。逆に家事、育児、介護など家庭内のやりとりは支払いが生じないのでGDPに加算されない。」
ブータンの国民は4人に1人が貧困なのに、2005年の国勢調査では97%が幸せと言っている。ブータンチベット仏教(カギュ派)が非常に深く浸透していて、小さい子から高齢者までちゃんと理解して信じている。その中で一番大事なのが互助互恵、お互いに助け合うこと」
「首都のティンプーには職がない若者も少なからずいるが、物乞いやホームレスは一切いない。貧しい人がいればみんなで助け合う。助け合いのやりとりは、GDPにカウントされないが、ブータン人はそういうやりとりで幸福を実感する。家庭、学校、職場で人と人の絆を大切にすることを大事にしている。三世代同居の家庭が多い」
ブータンの人口は鳥取県島根県に相当する。県でも市町村でもいいが、小さい規模でまとまりやすい単位で住民と首長が一体となり、どういう自治体にしようかビジョンを描き、具体的に実施していくのにブータンはいい参考となる」
「人と人との心のつながりはどこまでも大事。互助互恵を日本社会に復活させるには家族、地域、近隣社会との絆が大事だ。現世代が幸福だからと全部消費し、将来世代につけが回るのでは、国はどんどん衰退し、幸せといえない。持続可能な発展が担保されないといけない」 (1/5付中日新聞6面より)
 
以前からブータンのニュースはよく出てくるが、そろそろ日本も物質に頼った幸福から精神の幸福にシフトしなければいけないだろう。税収がないのに消費でしか社会を成り立たせられないのではいずれ近いうちに経済破綻は避けられない。健全財政にするためにも、助け合い社会を目指した教育改革(おとな教育)を即、行なわなければと思う。それができないならば、寿命を待つしかないだろう。少子化が問題になっているが7000万人くらいになれば良い世の中になると思う(正月の道路は快適でした)。次の世代は、じっとそれを待つか自ら勝ち取るか、何か「1Q84」を読んでいるとそんなことも思う。