小さな金融大国アイスランドが破綻の恐れ
10月15日22時8分配信 産経新聞
 世界最北の島国アイスランド金融危機の激震に見舞われている。同国の高金利に海外マネーが吸い寄せられ、国内銀行の総資産は国内総生産(GDP)の10倍に。1人当たりのGDPでも富裕国に仲間入りした。しかし、バブルが破裂し自国通貨は暴落、銀行は国有化され「国家崩壊」の恐れもある。人口32万の“小さな金融大国”の破綻(はたん)を検証した。(ロンドン 木村正人)
 昨年9月、「13%超(当時)の政策金利は危険すぎないか」という記者の質問に当時、アイスランド中央銀行幹部は「国内銀行やカード会社の全口座は中央データベース(CDB)で集中管理しており、カネの動きは一目瞭然(りょうぜん)。適切な金融政策を打てる」と胸を張った。

 カードの普及で現金の流通量がGDPの1%と世界で最もキャッシュレスに近づいた同国は「小国開放経済の成功モデル」ともてはやされた。貨幣にタラやカラフトシシャモが描かれる国の基幹産業は輸出の7割を占める漁業だ。欧州最貧国だった1970〜80年代に、漁獲量や石油ショックに影響され30〜50%のインフレを経験。経済の安定を図るため政府は90年代、市場自由化と民営化を進めた。94年には欧州経済地域(EEA)にも加盟した。

 産業多角化モデルの一つが金融だった。ロンドン大LSE校のダニエルソン教授は「欧州にはスイスやルクセンブルクなど小さな金融大国がある。自由化を進めれば世界中のカネが集まり、手数料収入が見込める。小国が金融への特化を図るのは自然」と言う。

 その結果、海外のカネが流入し建設ラッシュが起き、ポーランドや中国からの出稼ぎ労働者が増えた。地熱発電を利用したアルミ精錬事業も拡大。3〜5%の経済成長が続き、2004年には1人当たりGDPで世界6位につけた。国内銀行ランズバンキの会長は国内2位の長者になり、06年にはサッカーの英イングランド・プレミアリーグのチームを買収したが、この勢いはバブルが生んだ見せかけにすぎなかった。

 「インフレ抑制のため中央銀行政策金利を引き上げたことが裏目に出た」と同教授は指摘する。低金利の海外でカネを借り、高金利アイスランドの銀行に預ける。国内ではインフレが起き金利が引き上げられ、海外からさらにカネが流入アイスランド通貨クローナの価値が増したことも拍車をかけた。ついにインフレ率は14%、政策金利は15.5%になった。

 クローナは6日、対ユーロで30%も急落。ハーデ首相は「国家崩壊の危機」を訴え、議会はすべての国内銀行を国有化する法案を可決した。国有化された上位3行の総資産はクローナ暴落でGDPの何十倍になるのか想像もつかない。100以上の団体が約10億ポンド(1800億円)を預けていた英国は、反テロ法を適用しアイスランドの銀行が英国内に持つ資産を凍結した。オランダやドイツも預金返還を求めている。

 アイスランドでは低金利の外貨建てローンで住宅を購入、投資目的で2戸目を買う例が目立った。住宅価格の下落と為替差損に見舞われ、こうした人々は自己破産するしかない。銀行員の解雇、一時解雇の動きも広がっている。「元の漁業国に戻るほかない」との皮肉も出始めている。

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 人口32万の国アイスランド岡崎市の人口とほぼ同じ。そして、国の舵取りの失敗で一国が破綻するという。北海道の夕張市が破綻したのと同じようなことか?
 昔、井上ひさしの小説に『吉里吉里人』(きりきりじん)というのがありましたが、まんざら架空のはなしでなく、地方独立なんかが出来るかも知れませんね。小さい国というのは、その存続までも賭けて政策を決めなければならない、そして失敗すればすぐに跳ね返ってくる厳しさ。日本の政治家もそれぐらいの真剣さをもって国政に当たって欲しいものです。しかし、もしそうなったら、経済だけで政治的に無策な日本はすぐ潰れてしまいますね。その経済も何か怪しい雰囲気…。